更年期に入ってから、
「寝つけない」
「夜中に何度も目が覚める」
「朝早く目が覚めてしまう」
と悩む方は少なくありません。
「年齢のせいかな」と我慢してしまいがちですが、更年期では女性ホルモンの変化や、のぼせ・発汗・動悸、不安感などが重なって、眠りが浅くなりやすいことが知られています。
ただし、眠れない原因は更年期だけとは限りません。甲状腺の病気やうつ、不眠症、睡眠時無呼吸症候群など、別の病気が隠れていることもあります。日常生活に支障が出ている場合や、気分の落ち込みが強い場合は、早めの受診が大切です。
この記事では、更年期で眠れなくなる主な原因、市販薬や漢方の考え方、セルフケア、受診の目安まで、薬剤師目線でわかりやすく解説します。
この記事のまとめ
- 更年期では、女性ホルモンの変化やホットフラッシュ、不安感などで眠りが浅くなりやすい
- 「寝つけない」だけでなく、「途中で起きる」「早朝に目が覚める」形もよくある
- 市販薬を使う前に、まずはのぼせ・動悸・不安・生活リズムなど原因を整理することが大切
- 漢方は体質や出やすい症状に合わせて考える
- 症状がつらくて仕事や家事に影響しているとき、気分の落ち込みが強いときは受診を考える
更年期で眠れないのはなぜ?
結論からいうと、更年期で眠れないのは、女性ホルモンの変化に加えて、体と心の不調が重なりやすいからです。
更年期は一般に閉経の前後5年ほど、合計約10年の時期を指します。この時期はエストロゲンが大きくゆらぎながら低下していき、心身にさまざまな変化が起こります。更年期障害では不眠、イライラ、不安、のぼせ、発汗、動悸など多様な症状がみられるとされています。
眠れない原因は1つではありません。更年期では、主に次のような理由が重なりやすいです。
ホルモン変化で眠りが浅くなりやすい
更年期ではエストロゲンの低下により、自律神経のバランスが乱れやすくなります。その結果、寝つきが悪い、途中で目が覚める、朝早く目が覚めるといった不調につながることがあります。
のぼせ・発汗・動悸で夜中に起きやすい
更年期の代表的な症状であるホットフラッシュは、夜間の睡眠にも影響します。のぼせ、急な発汗、動悸がきっかけで眠りが途切れ、その後また寝つけなくなることがあります。更年期ではホットフラッシュなどがきっかけとなり深く眠れないことが多いとされています。
不安やイライラで頭が休まりにくい
更年期では、気分のゆらぎや不安感、イライラが強くなる方もいます。寝る前に考えごとが止まらない、少しの物音で目が覚める、眠れないこと自体が不安になる、という流れで慢性化することもあります。
加齢による睡眠の変化も重なる
更年期の時期は、年齢による睡眠の変化も出やすい時期です。若い頃より眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めやすくなったりするため、更年期症状が重なるとさらに「眠れない」と感じやすくなります。
更年期の不眠で多い症状
更年期の眠りの悩みは、「ただ寝つけない」だけではありません。次のような形があります。
寝つけない
布団に入っても頭がさえてしまい、なかなか眠れない状態です。不安感や緊張、ホットフラッシュが関係していることがあります。
夜中に何度も起きる
更年期では、汗、トイレ、動悸、ちょっとした物音などをきっかけに目が覚めやすくなります。起きたあとに再び眠れないと、寝不足感が強くなります。
朝早く目が覚める
予定よりずっと早く起きてしまい、そのまま眠れないタイプです。気分の落ち込みや不安が強いときにもみられます。
眠った感じがしない
時間としては寝ていても、眠りが浅く、朝に「休めた感じ」がない状態です。厚労省の睡眠ガイドでも、睡眠時間だけでなく、朝の休養感が大切な目安とされています。
更年期で眠れないときに、まず確認したいこと
市販薬や漢方を選ぶ前に、まず原因の見当をつけることが大切です。理由は、原因によって対処法が変わるためです。
のぼせや汗で起きていないか
夜中に急に暑くなる、汗をかいて目が覚めるなら、ホットフラッシュの関与が考えられます。更年期そのものの対策を考えた方がよい場合があります。
不安や気分の落ち込みが強くないか
眠れないだけでなく、日中も不安が強い、涙もろい、やる気が出ないときは、単なる一時的な寝不足ではないことがあります。更年期障害や気分の不調が関係する場合があります。
いびきや息苦しさがないか
更年期では睡眠時無呼吸症候群がみられることもあります。いびきが強い、息が止まると言われる、日中の眠気が強い場合は受診を考えましょう。
カフェイン、寝酒、夜ふかしが続いていないか
就寝前の飲酒や喫煙は、かえって睡眠の質を悪化させることが厚労省の睡眠指針でも示されています。夜のスマホ、遅い夕食、カフェインのとりすぎも見直したい点です。
更年期で眠れないときの対処法
生活リズムを整える
基本ですが、とても大切です。更年期の不眠は、少しの生活の乱れで悪化しやすいからです。
見直したいポイントは次の通りです。
- 朝はなるべく同じ時間に起きる
- 朝の光を浴びる
- 昼寝は長くしすぎない
- 夕方以降のカフェインを控える
- 寝る前のスマホをだらだら見ない
- 寝酒を習慣にしない
- 就寝前はぬるめの入浴や軽いストレッチで体をゆるめる
厚労省の睡眠指針でも、就寝前にリラックスすること、就寝前の飲酒や喫煙を控えること、生活リズムを整えることが勧められています。
寝室環境を整える
更年期では暑さや汗で眠りが途切れやすいので、寝室の温度や寝具も大切です。
- 暑すぎない室温にする
- 汗をかきやすい人は寝具やパジャマを見直す
- 夜中に目が覚めても時計を何度も見ない
- 「すぐ寝なきゃ」と焦りすぎない
「眠れないことへの不安」が続くと、さらに眠れなくなる悪循環に入りやすいです。
ホットフラッシュ対策を考える
夜間ののぼせや発汗が強い方は、不眠だけを切り取るより、更年期症状全体への対応を考える方が改善しやすいです。ホルモン補充療法など、更年期症状への治療が不眠の軽減に役立つことがあるとされています。
心の負担が大きいときは一人で抱え込まない
更年期障害は身体だけでなく、心理的・社会的な要因も重なって起こるとされます。傾聴や生活習慣の見直し、カウンセリングなども大切な対応です。
更年期で眠れないとき、市販薬は使っていい?
結論として、一時的な不眠であれば市販薬を検討することはあります。ただし、更年期症状そのものが強い場合や、気分の落ち込み、不安、動悸、のぼせが目立つ場合は、市販薬だけで長く様子を見るより受診を考えた方がよいことがあります。
市販薬が向くケース
- 一時的に寝つきが悪い
- 数日〜短期間の不眠
- 日中の強い落ち込みや危険な症状はない
- 生活リズムの乱れが原因として思い当たる
市販薬だけで済ませない方がよいケース
- 何週間も不眠が続く
- ホットフラッシュや動悸が強い
- 気分の落ち込みが強い
- 日中の生活に支障が出ている
- いびき、無呼吸、強い日中の眠気がある
- 他の病気や薬の影響が気になる
市販の睡眠改善薬の注意点
一般用医薬品の睡眠改善薬には抗ヒスタミン成分が使われることがあります。翌朝の眠気、ふらつき、口の渇き、便秘などに注意が必要です。特に、車の運転をする方、緑内障、前立腺肥大、便秘傾向が強い方、高齢の方は慎重に考える必要があります。こうした薬は「更年期の根本原因を治す薬」ではなく、あくまで一時的な対処です。
※服用中の薬がある方は、購入前に薬剤師へ相談してください。
更年期で眠れないときの漢方の考え方
漢方は、「眠れない」という症状だけでなく、どんな不調が一緒に出ているかで考えるのが基本です。更年期の不眠では、不安、イライラ、のぼせ、冷え、疲れやすさなどが重なりやすいため、体質に合うかどうかが大切です。
不安やイライラが強いタイプ
気持ちが張って眠れない、イライラしやすい、不安感が強い方では、気分のゆらぎに合わせた漢方が検討されることがあります。
のぼせやほてりが目立つタイプ
顔が熱い、汗をかく、のぼせて眠れない方では、熱感や血流の偏りを意識した漢方が選ばれることがあります。
冷えや疲れやすさがあるタイプ
手足が冷える、体力が落ちた感じがある、だるくて眠りも浅い場合は、別の考え方になることがあります。
漢方は自己判断で選ぶと合わないこともあるため、今出ている症状をまとめて薬剤師や医師に相談するのがおすすめです。
下記も参照してみてください。


更年期で眠れないときの受診目安
ここはとても大切です。
更年期の不眠と思っていても、別の病気が隠れていることがあります。厚労省の資料では、更年期障害の受診目安として、複数の症状が重なってつらい、日常生活に影響が出ている、気分が落ち込んで何もやる気が起きないといった場合が挙げられています。
早めに受診したいケース
- 眠れない日が続き、仕事や家事に支障が出ている
- 不安、イライラ、気分の落ち込みが強い
- のぼせ、動悸、発汗など更年期症状が強い
- 市販薬を使っても改善しない
- 眠れても疲れが取れない
- いびき、息苦しさ、無呼吸を指摘された
- 症状のせいで外出や人づき合いがつらい
すぐ相談したいケース
- 強い抑うつ気分がある
- 胸痛、強い動悸、息苦しさがある
- めまいが強い
- 体重変化、震え、強いだるさなど他の病気も疑う症状がある
更年期障害には、甲状腺など他の臓器の異常が伴うこともあります。眠れない症状を「更年期だから」と決めつけないことが大切です。
何科を受診すればいい?
更年期症状が中心なら、まずは婦人科が相談しやすいです。
不眠が主で、睡眠そのものの相談をしたい場合は心療内科、精神科、睡眠外来、内科が選択肢になります。
動悸、息切れ、めまい、甲状腺が気になる症状がある場合は、症状に応じて内科受診も考えましょう。
「婦人科は少しハードルが高い」と感じる方もいますが、
- 不眠
- のぼせ
- 発汗
- イライラ
- 動悸
がいくつか重なっているなら、更年期を含めて相談しやすいです。
更年期で眠れないときによくある質問
Q1. 更年期の不眠は自然に治りますか?
軽い場合は波があり、生活習慣の見直しで楽になることもあります。ただ、症状が長引いたり、日常生活に影響が出たりする場合は受診した方が安心です。
Q2. 市販の睡眠改善薬を毎日飲んでもいいですか?
毎日頼り続ける前に、原因の整理が必要です。市販薬は一時的な対処向きで、更年期症状そのものの治療ではありません。続く場合は受診を考えましょう。
Q3. 不眠だけでも更年期の可能性はありますか?
あります。不眠は更年期の代表的な症状の1つです。ただし、他の病気でも起こるため、自己判断しすぎないことが大切です。
Q4. 漢方と市販の睡眠薬はどちらがよいですか?
どちらがよいかは、出ている症状によります。寝つきだけの問題なのか、のぼせや不安、イライラが強いのかで考え方が変わります。迷うときは薬剤師や医師に相談しましょう。
まとめ|更年期で眠れないときは「不眠だけ」で見ないことが大切
更年期で眠れないのは、女性ホルモンの変化だけでなく、のぼせ、発汗、動悸、不安、生活環境の変化などが重なりやすいからです。
そのため、対処法も「睡眠薬を飲むかどうか」だけでは足りません。
大切なのは、次の3点です。
- まず、どんな理由で眠れないのかを整理する
- 軽い不眠なら生活習慣や一時的な市販薬を考える
- つらさが続くときは、更年期全体の治療や受診を考える
特に、仕事や家事に影響が出ている、気分の落ち込みが強い、動悸やめまいがあるときは、我慢しすぎないでください。更年期の不眠はよくある悩みですが、我慢するしかない不調ではありません。
