薬剤師は将来余る?AI時代に必要とされる薬剤師とは

「薬剤師って将来余るって本当?」

「AIが進化したら、薬剤師の仕事はなくなる?」

「今から薬学部に進んでも大丈夫?」

薬学生や若手薬剤師なら、一度はこうした不安を感じたことがあるかもしれません。

実際、厚生労働省の需給推計では、薬剤師全体では将来的に供給が需要を上回る可能性が示されています。 一方で、地域や勤務先によっては現在も薬剤師不足があり、単純に「薬剤師が余る=仕事がなくなる」とは言えません。

さらにAI・ICT・電子処方箋・調剤機器の進化によって、 薬剤師の仕事は「なくなる」というより、求められる仕事の中身が変わっていくと考えた方が現実的です。

目次

結論|薬剤師は将来余る可能性がある。でも全員が不要になるわけではない

厚生労働省の需給推計では、薬剤師の総数について 今後しばらくは需要と供給が同程度で推移するものの、長期的には供給が需要を上回る可能性 が示されています。

ただし同時に、地域偏在や業態偏在によって、特に病院などでは薬剤師不足が起きていることも指摘されています。

つまり将来は、

  • 薬剤師免許を持っているだけで有利
  • どこでも高い給与で採用される
  • 同じ仕事を続けていれば安泰

という時代ではなくなる可能性があります。

その一方で、患者さんへの継続フォロー、在宅、多職種連携、薬物療法の評価など、 「薬剤師だからこそ価値を出せる仕事」の重要性はむしろ高くなっています。

厚労省の需給推計ではどうなっている?

厚生労働省が公表している2020〜2045年の薬剤師需給推計では、 薬剤師業務が充実して需要が増えるケースを考慮しても、 将来的には供給が需要を上回る可能性が示されています。

ただし、この数字は未来を確定するものではありません。 人口、薬学部の入学者数・国家試験合格者、医療制度、薬剤師業務の拡大などによって変わります。

「○年後に薬剤師が○万人余る」と断定するのは注意が必要です。
需給推計は一定の条件を置いたシミュレーションであり、薬剤師業務の変化によって需要も変わります。

将来余るのに、なぜ今も薬剤師不足の地域がある?

重要なのが薬剤師の偏在です。

全国の薬剤師数が足りているかどうかと、 「自分が住む地域の病院・薬局に薬剤師が足りているか」は別問題です。

偏り起こること
都市部と地方都市部には応募が集まり、地方では採用が難しいことがある
薬局と病院地域によっては病院薬剤師の確保が難しい
人気エリアと不人気エリア同じ薬剤師でも求人倍率や給与条件が変わる

厚生労働省も薬剤師偏在指標を設け、地域ごとの薬剤師確保を進めています。

したがって、薬剤師全体の数が増えても、 地域・勤務先・得意分野によって需要には差が残る可能性があります。

AIで薬剤師の仕事はなくなる?

AIの進化を考えると、「薬剤師そのものが不要になるのでは?」と思う人もいるでしょう。

しかし、厚生労働省の議論でも、 AI・ICTや調剤機器の発展によって薬剤師業務が変化することを前提に、 対物業務を効率化し、対人業務を充実させる方向が示されています。

つまり、

AIに薬剤師が丸ごと置き換えられる

ではなく

AIや機械で効率化できる仕事は任せ、人間の薬剤師は判断・説明・連携へ比重を移す

という変化の方が考えやすいです。

2026年度の厚生労働科学研究でも、 薬剤師の対人業務におけるICT・AI技術の活用について、 薬物療法の質や安全性への影響、好事例、課題を検討する研究が設定されています。

AI・機械に置き換わりやすい薬剤師業務は?

すべてが自動化されるわけではありませんが、 ルール化・定型化しやすい仕事ほど、AIや機械で効率化されやすくなります。

効率化されやすい仕事今後のイメージ
薬剤の取り揃え自動払出機・調剤機器などで効率化
定型的なチェックシステムによる重複・相互作用チェックの支援
記録・文章作成音声認識や生成AIによる下書き支援
情報検索AI・データベースによる検索時間短縮
定型的な事務作業電子化・自動化が進む可能性

ここで大切なのは、「AIにできる仕事を守ろうとする」のではなく、AIを使って薬剤師にしかできない仕事へ時間を移すことです。

AI時代に必要とされる薬剤師とは?

① 患者さんの状況を聞き取れる 症状、生活背景、飲み忘れ、副作用など、処方せんだけでは分からない情報を引き出せる薬剤師。
② 薬学的に評価できる 単に薬の説明をするだけでなく、「この患者さんにこの薬で問題ないか」を考えられる薬剤師。
③ 医師・看護師などと連携できる 疑義照会、トレーシングレポート、在宅、多職種連携などで情報をつなげられる薬剤師。
④ 在宅・地域医療に対応できる 患者さんの自宅や生活環境まで含め、継続的に薬物療法を支えられる薬剤師。
⑤ AIを使える AIに判断を丸投げするのではなく、下書き・検索・記録などに使い、最終判断は自分でできる薬剤師。
⑥ 専門性・強みがある がん、感染、糖尿病、精神科、在宅、OTCなど、「この分野なら相談したい」と思われる強みを持つ薬剤師。

「薬を正確に渡せる」だけでは差がつきにくくなる

調剤の正確性は今後も絶対に必要です。 ただし、それは薬剤師としての最低条件でもあります。

今後は、

  • 患者さんの問題点に気づく
  • 処方提案につなげる
  • 服薬後をフォローする
  • 他職種へ必要な情報を伝える
  • AIの出力が正しいか評価する

といった能力の差が、より見えやすくなるでしょう。

薬学生は今から何を意識すればいい?

これから薬剤師になる人が、AIそのものを怖がる必要はありません。

むしろ、学生のうちから次の5つを意識しておくとよいでしょう。

  1. 薬理・病態など基礎をきちんと身につける
  2. 実習では「なぜこの処方なのか」を考える
  3. 患者さんとのコミュニケーションを避けない
  4. 病院・薬局・企業など複数のキャリアを知る
  5. AI・ICTを使う側になる

AIが答えを出してくれる時代ほど、 「その答えが本当に正しいか」を判断するための薬学知識が重要になります。 AIを使うためにも、基礎知識は不要になりません。

若手薬剤師が今できること

すでに薬剤師として働いている人なら、 「今の職場で何年働けばいいか」だけではなく、 今の職場でどんな能力が増えているかを考えてみてください。

例えば3年間働いて、

  • 調剤スピードだけが上がった
  • 同じ門前処方だけを経験した
  • 在宅や疑義照会をほとんど経験していない
  • 薬剤師以外との連携がない

という状態なら、将来に向けて経験の幅を広げる必要があるかもしれません。

逆に、

  • 在宅を担当した
  • 管理薬剤師を経験した
  • 複数科目の処方を経験した
  • 医師への情報提供を行った
  • 新人教育を担当した
  • AI・ICTを業務改善に使った

といった経験は、勤務先が変わっても活かしやすい強みになります。

PR

今の職場以外では、どんな経験ができる?

将来に不安がある場合、すぐ転職する必要はありません。 ただ、実際の求人を見て「他の薬局ではどんな業務・待遇・キャリアがあるのか」を知っておくと、 自分に足りない経験を整理しやすくなります。

ファルマスタッフ

まとめ|「薬剤師が余る」より「どんな薬剤師が残るか」を考えよう

厚生労働省の推計では、長期的にみると薬剤師の供給が需要を上回る可能性があります。

一方で、地域・業態による偏在があり、病院などで薬剤師不足が続いている地域もあります。 そのため、「将来、薬剤師は全員余って仕事がなくなる」と考えるのは極端です。

AIについても同じです。

調剤、検索、記録などの一部はさらに効率化される可能性がありますが、 患者さんの状態を見て判断し、説明し、他職種と連携する仕事は引き続き重要です。

これから重要になるのは、 「AIに仕事を奪われない薬剤師」ではなく、「AIを使って、より価値の高い仕事ができる薬剤師」 だと思います。

薬学生の段階では、将来を不安に思いすぎるより、 まずは基礎を学び、さまざまな現場を知り、自分がどんな薬剤師になりたいのかを考えてみてください。

参考資料
・厚生労働省「薬剤師の需給推計」(2020〜2045年)
・厚生労働省「薬剤師確保計画ガイドライン・薬剤師偏在指標」
・厚生労働省「薬剤師・薬局の業務に係る検討」
・厚生労働科学研究「薬剤師の対人業務の充実のためのICTの活用に向けた研究」

※需給推計は一定の仮定に基づく将来推計であり、将来の薬剤師数・求人状況を確定するものではありません。
※記事内にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
よかったらシェアしてね!
目次