「手足が冷えて眠れない」「冬だけでなく夏の冷房でもつらい」──こうした冷え性の悩みは、特に女性に多く見られます。
厚生労働省の調査によれば、女性の約4割が慢性的な冷えを自覚しているともいわれています。
冷え性は単なる体質と思われがちですが、放置すると血行不良や自律神経の乱れ、ホルモンバランスの影響などと関連し、肩こり・頭痛・月経不順・不眠など多くの不調を引き起こす可能性があります。
本記事では、薬剤師監修のもとで 冷え性の原因・診療科・セルフケア・市販薬やサプリ・生活改善の方法 を徹底解説します。
冷え性とは?特徴とメカニズム
冷え性の定義
冷え性とは、外気温とは関係なく体の一部、特に手足や下半身が冷たく感じる状態を指します。医学的には「末梢循環不全」や「自律神経失調症の一症状」として扱われることもあります。
冷え性の主な原因
- 血行不良:運動不足・低血圧・貧血など
- 自律神経の乱れ:ストレスや生活リズムの乱れ
- ホルモンバランスの影響:特に女性は月経周期や更年期で変化しやすい
- 筋肉量の低下:基礎代謝が下がり熱を作りにくい
冷え性のタイプ
四肢末端型(末端冷え性)
- 特徴:手足の指先が冷たく、冬場は靴下や手袋をしても温まりにくい。
- 原因:
- 交感神経の緊張により末端の血流が悪くなる
- ダイエットや低体重で筋肉量が少なく、熱を生み出しにくい
- なりやすい人:若い女性、痩せ型、運動不足の人
下半身型冷え性
- 特徴:お腹から下、特に腰や太もも・足が冷える。
- 原因:
- 骨盤内の血流が悪くなる(長時間の座り仕事など)
- 自律神経やホルモンバランスの乱れで下半身の循環不良
- なりやすい人:デスクワーク中心の人、出産後の女性
内臓型冷え性
- 特徴:手足は温かいが、胃腸やお腹の中が冷えている。お腹を下しやすい、便秘や胃の不調が多い。
- 原因:
- 自律神経の乱れにより内臓の血流が低下
- 冷たい飲み物・食べ物の摂りすぎ
- なりやすい人:冷たいものを好む人、ストレスが多い人
全身型冷え性
- 特徴:体全体が冷えている。体温が低めで、だるさ・疲れやすさを伴うことが多い。
- 原因:
- 基礎代謝が低下(加齢、甲状腺機能低下症などの疾患も関連)
- 栄養不足や過度のダイエット
- なりやすい人:高齢者、慢性的に疲れている人、生活習慣病がある人
冷え性で受診すべき診療科
- 内科:貧血、低血圧、甲状腺疾患を確認
- 婦人科:月経不順、更年期障害がある場合
- 循環器内科:動脈硬化や血管の病気を疑う場合
- 漢方内科:体質改善を目的とする場合に有効
冷え性におすすめの市販薬・サプリメント
漢方薬(OTC)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
特徴と効果
- 主に女性の体質改善に使われる代表的な漢方薬
- 体を温め、血流を良くする「当帰」、水分代謝を整える「茯苓」「沢瀉」などを含む
- 血流不足による冷え・むくみ・月経不順・貧血傾向のある方におすすめ
冷え性タイプ
- 手足の冷えと同時にむくみやだるさを感じる人
- 色白で体力があまりなく、月経不順や生理痛を伴いやすい女性
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
特徴と効果
- 血のめぐりを改善する「駆瘀血(くおけつ)」作用が中心
- 「桂皮」「茯苓」「桃仁」「牡丹皮」「芍薬」が含まれ、血流をスムーズにする
- 血行不良からくる冷え・のぼせ・肩こり・月経痛に効果が期待される
冷え性タイプ
- 下半身は冷えているのに顔はのぼせやすい
- 血色が悪く、肌にシミやくすみが出やすい
- 生理痛が重い、経血に塊が混じるといった症状のある方
八味地黄丸(はちみじおうがん)
特徴と効果
- 加齢による冷えや体力低下に用いられる代表的な処方
- 「地黄」「山茱萸」「山薬」「桂皮」「附子」などを含み、体を内側から温め腎機能を補う
- 腰や足の冷え・頻尿・疲れやすさ・下半身のだるさに適している
冷え性タイプ
- 高齢者や中高年に多く、下半身が特に冷える
- 夜間の頻尿や足腰のだるさを伴う
- 慢性的な疲労感や体力低下を感じている方
サプリメント
鉄分サプリ
ポイント
- 特に女性に多い鉄欠乏性貧血は、血液が酸素を運べなくなり、冷えやだるさの原因に
- サプリメントで鉄分を補うことで、体の隅々まで酸素が行き渡り、冷え対策に役立つ
こんな人におすすめ
- 顔色が悪い、立ちくらみが多い
- 月経量が多く、疲れやすい
ビタミンEサプリ
ポイント
- 強力な抗酸化作用があり、血行を促進するビタミン
- 末梢血流を改善することで、手足の冷え対策に役立つ
こんな人におすすめ
- 手足の冷えがつらい
- 乾燥肌や肩こりも同時に感じる方
ビタミンB群サプリ
ポイント
- エネルギー代謝を助け、体を内側から温める働きがある
- 自律神経を整える作用があり、ストレス性の冷えにも有効
こんな人におすすめ
- 疲れやすい、エネルギー不足を感じる
- 冷えに加えて気分の落ち込みがある
高麗人参・ショウガ成分配合サプリ
ポイント
- 漢方由来の成分で血流を促進し、体を芯から温める
- 特に冷え性と同時に疲労感を持つ人に向いている
こんな人におすすめ
- 慢性的な冷えと疲労
- 寒さに弱い体質
生活習慣でできる冷え性改善法
食生活の工夫
- 体を温める食材を積極的にとる
しょうが・ねぎ・にんにく・唐辛子・シナモンなどの香辛料は血流を促進します。 - 温かい食事を心がける
冷たい飲み物や生野菜ばかりでは体を冷やします。スープ・鍋料理・温野菜がおすすめ。 - タンパク質をしっかり摂取
筋肉量を維持するために肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく。筋肉は熱を作り出す器官です。
適度な運動
- ウォーキングやストレッチ
下半身の血流を改善し、代謝を高める効果があります。 - ヨガや軽い筋トレ
筋肉量を増やすと「熱産生力」が高まり、冷えにくい体に。 - ながら運動
デスクワーク中にかかとを上下させる「かかと上げ運動」も効果的。
入浴習慣
- シャワーだけでなく湯船につかる
38〜40℃のぬるめのお湯に10〜15分浸かると血行促進に効果的。 - 半身浴・足湯
冷えが強いときには下半身を重点的に温めるのも有効。 - 入浴剤の活用
ショウガ・唐辛子・炭酸ガス入りの入浴剤で血流改善をサポート。
服装と日常の工夫
- 重ね着で調整
首・手首・足首を冷やさない「三首温め」を意識。 - 靴下・腹巻きの活用
下半身の冷え対策には特に有効。寝るとき用の保温グッズも便利。 - エアコンの冷え対策
夏場のクーラー冷えにはカーディガンや膝掛けを常備。
睡眠とリズム管理
- 十分な睡眠を確保
自律神経のバランスが整い、血流がスムーズに。 - 寝る前のスマホやカフェインを控える
自律神経を乱さないことが冷え性改善につながる。 - 朝は太陽光を浴びる
体内時計が整い、代謝アップ&体温リズムの改善に。
ストレス管理
- 深呼吸やリラックス習慣
ストレスは交感神経を緊張させ、末端の血流を悪化させます。 - 軽い運動・趣味時間を持つ
心をリラックスさせることで血流改善効果も期待できます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 冷え性は病気ですか?
A. 単独では病気ではありませんが、貧血・甲状腺疾患・自律神経失調などの症状の一部であることがあります。改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
Q2. 市販薬だけで改善できますか?
A. 軽度の冷え性は漢方薬やサプリで改善が期待できます。ただし重度や長引く場合は病院での検査が必要です。
Q3. 妊娠中でも市販の冷え性対策は使えますか?
A. 妊婦は一部の漢方薬が使えない場合があります。必ず医師・薬剤師に相談してください。
Q4. 冷え性に効く運動はありますか?
A. スクワットやウォーキングなど大筋群を動かす運動が効果的です。
Q5. 漢方薬はどのくらいで効果が出ますか?
A. 個人差がありますが、2〜3週間の継続で体質改善を実感し始める方が多いです。
まとめ:冷え性は放置せず、早めの対策を
冷え性は「体質だから」と諦めてしまいがちですが、血行不良やホルモンバランスの乱れなど、体のサインであることも少なくありません。
- 受診すべき診療科を知ること
- 市販薬・サプリを賢く取り入れること
- 生活習慣を改善すること
これらを組み合わせることで、冷え性は少しずつ改善していきます。