便秘は誰にでも起こりうる身近なトラブルですが、その症状や原因、体質は人それぞれです。市販薬で対処しようとする際には、自分に合った成分や作用の強さ、副作用の少なさを見極めることが大切です。
この記事では、薬剤師の視点から便秘に効果的な市販薬を成分ごとに紹介し、選び方や注意点についても詳しく解説します。
便秘の原因とタイプ別の特徴
便秘にはさまざまなタイプがあり、原因や対処法も異なります。
タイプ | 特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
弛緩性便秘 | 腸の動きが弱まり排便力が低下 | 加齢、運動不足、水分不足 |
けいれん性便秘 | 腸が過剰に動いて便が通りづらくなる | ストレス、過敏性腸症候群 |
直腸性便秘 | 便意を我慢する習慣が原因 | 排便のタイミングを逃す生活習慣 |
薬剤性便秘 | 薬の副作用による | 鎮痛薬、抗うつ薬、鉄剤など |
自分の便秘タイプを把握することで、適切な市販薬の選択が可能になります。
市販薬の成分ごとの違い
成分類 | 主な成分 | 特徴・用途 |
刺激性 | ビサコジル、センノシド | 即効性が高いが依存性や腹痛リスクあり |
浸潤性 | DSS(ジオクチルソジウムスルホサクシネート) | 便を柔らかくする。習慣性は低い |
塩類下剤 | 酸化マグネシウム | 水分を吸収し便を柔らかく。高齢者にも適する |
漢方 | 麻子仁丸、大黄含有薬 | 緩やかに効き、体質改善に向いている |
整腸剤 | 乳酸菌、ビフィズス菌 | 軽度な便秘や継続使用に向く。副作用が少ない |
薬剤師が厳選!便秘に効くおすすめ市販薬【10選+成分解説】
刺激性
だいたい7~8時間で効いてくるものになります。夜飲んで、朝に効くというようなイメージです。(個人差はあります)
コーラック(大正製薬)
- タイプ:刺激性便秘薬
- 主成分:ビサコジル(10mg)
- 特徴: 腸のぜん動運動を促進して速やかに排便を促す。即効性重視。
スルーラックS(エスエス製薬)
- タイプ:刺激性便秘薬
- 主成分:ビサコジル(15mg)、センノサイド
- 特徴: 1~3錠で、体調に合わせて使用可能
新ウィズワン(アサヒグループ食品)
- タイプ:刺激性便秘薬(生薬)
- 主成分:センノシド、カスカラサグラダ乾燥エキス
- 特徴: 腸の働きをサポートする生薬成分カスカラサグラダ乾燥エキス配合
浸潤性
コーラックⅡ(大正製薬)
- タイプ:浸潤性+刺激性
- 主成分:ビサコジル(15mg)、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)
- 特徴: リッチな処方で、しっかりした効き目
塩類下剤
酸化マグネシウムE便秘薬(健栄製薬)
- タイプ:塩類下剤
- 主成分:酸化マグネシウム
- 特徴: 便に水分を与えて柔らかくする。妊婦にも安全性高い。
ビオフェルミン酸化マグネシウム便秘薬 (大正製薬)
- タイプ:塩類下剤
- 主成分:酸化マグネシウム、ラクトミン
- 特徴: 便に水分を与えて柔らかくし、乳酸菌で腸内を整える。
漢方
ツムラ漢方麻子仁丸エキス顆粒(ツムラ)
- タイプ:漢方薬
- 主成分:麻子仁、大黄、杏仁など
- 特徴: 腸の潤い不足による便秘に。慢性化している人に向いている。
大地の漢方便秘薬(武田コンシューマーヘルスケア)
- タイプ:漢方薬
- 主成分:大黄、甘草
- 特徴: シニア世代に起こりがちな弛緩性便秘の方に
整腸剤
新ビオフェルミンS(大正製薬)
- タイプ:漢方薬
- 成分:ビフィズス菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌
- 特徴:ヒト由来の乳酸菌のため定着しやすく、腸内環境を整え便秘改善。小児・高齢者にも使いやすい。
ビオスリーHi(アリナミン製薬)
- 成分:酪酸菌、ラクトミン(乳酸菌)、糖化菌
- 特徴:小腸から大腸の部位ごとに働く3つの活性菌を配合
その他(おまけ)
イチジク浣腸(イチジク製薬)
- タイプ:浣腸剤
- 主成分:グリセリン
- 特徴: 5分~10分で効果。即効性重視の一時的対処に。
副作用と注意点
- 刺激性便秘薬の乱用はNG: 習慣性・耐性がつきやすく、自然排便力を低下させることがあります。
- 塩類下剤は腎機能への影響に注意: 特に高齢者や腎機能障害のある人は医師に相談を。
- 漢方薬でもアレルギーや体質に合わないことがある: 症状が悪化した場合は服用中止を。
子ども・高齢者向け便秘薬
- 子ども向け:浣腸、整腸剤、塩類下剤など、作用が穏やかで安全性の高い製品を選びましょう。
- 高齢者向け:「酸化マグネシウム」や「整腸剤」が一般的。脱水や筋力低下に注意して。
妊娠中・授乳中の便秘薬使用について
- 妊婦・授乳婦には酸化マグネシウムが安全性が高くよく使われます。
- センナ系やビサコジルなどの刺激性便秘薬は原則避けるべきですが、医師の判断で処方されるケースも。
食事・運動・生活習慣で便秘予防
- 水分を1日1.5~2L摂取すること
- 食物繊維を意識して摂る(野菜・海藻・果物など)
- 毎日の軽い運動(散歩・ストレッチ)で腸を刺激
- 朝食後にトイレ習慣を作ることで排便リズムを整える
よくある質問(Q&A形式)
Q1. 便秘薬を毎日使っても大丈夫ですか?
A. 毎日の使用は推奨されません。便秘薬は一時的な対症療法であり、慢性的な使用は自然な排便リズムを崩す原因になります。週に数回の使用にとどめ、食生活や生活習慣の見直しを基本としましょう。
Q2. 妊娠中でも使える便秘薬はありますか?
A. 妊娠中に使用可能な便秘薬は限られます。酸化マグネシウムは比較的安全性が高いとされますが、自己判断は避け、必ず主治医に相談しましょう。
Q3. 「効きすぎて下痢になった」場合はどうしたら?
A. 一度使用を中止し、水分補給を行いましょう。次回からは服用量を半分にするなど、量の調整をおすすめします。また、刺激性成分の薬ではなく、非刺激性の便軟化剤や漢方への切り替えも検討しましょう。
Q4. 食物繊維を摂っているのに便秘が改善しません。
A. 食物繊維だけでなく、水分不足や運動不足も便秘の原因になります。また、ストレスや自律神経の乱れが影響するケースもあります。便秘のタイプ(弛緩性、痙攣性、直腸性)を見極め、タイプに合った対処をすることが重要です。
Q5. 漢方薬はどのくらいの期間で効果が出ますか?
A. 漢方薬は即効性に乏しい反面、体質改善を目的とするため継続使用で効果を実感しやすくなります。目安として2〜4週間継続して様子を見てください。
まとめ
- 便秘薬は「成分の違い」「作用の強さ」「体質への適応」で選ぶのが大切
- 一時的な便秘には刺激性、慢性には整腸剤・漢方などが向いている
- 子ども・高齢者・妊婦は使用薬に注意し、医師・薬剤師に相談を
- 薬に頼りすぎず、生活習慣の改善も並行して行うことが根本的な対策に繋がります
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医薬品の使用については医師または薬剤師にご相談ください。