はじめに|なぜ“正しい施策”ほど現場で止まるのか
薬局や医療現場では、本部やマネージャーが設計した施策がうまく回らないことが少なくありません。
資料は整っている。
論理も正しい。
KPIも設定されている。
それでも現場が動かない――。
この矛盾の根本原因は、多くの場合「施策そのもの」ではありません。
成果を左右しているのは、施策の質ではなく“現場との関係性”である。
現場が動かない理由は、おおむね次の4つに集約されます。
- 信頼関係の不足
- 背景説明の不足
- 数値根拠の不足
- 1on1(個別対話)の不足
本記事では、精神論ではなく再現性のある実務メソッドとして、
- 現場に嫌われるマネージャーの特徴
- 現場が動くマネジメントの原則
- 施策を確実に実装するフレーム
- 1on1の具体的なやり方
を体系的に整理します。
現場に嫌われるマネージャーの典型パターン
① 遠隔コンサル型マネージャー
特徴
- 現場にほとんど足を運ばない
- 会議資料だけで判断する
- スライドで結論を押し付ける
現場の受け止め方
- 「実態を知らない」
- 「机上の空論」
結果
- 施策は形だけ実行される
- 実質的な改善は起きない
②「とりあえず指示」型マネージャー
よくある口癖は次の一言です。
「とりあえず、これやって」
このタイプに欠けているのは、次の3つ。
- 背景説明
- 数値根拠
- 明確な目的
現場の行動はこうなります。
- 表面上は従う
- 本気では取り組まない
- 不満だけが蓄積する
結果として、KPIは未達に終わり、信頼関係が悪化します。
③ 評価だけ管理型マネージャー
行動パターン
- 結果だけチェックする
- プロセスに寄り添わない
現場心理
- 「失敗しないことが最優先」
- 「挑戦しない方が安全」
結果
- 改善が止まる
- 組織が保守的になる
現場を動かすマネジメントの3原則
原則①|マネージャーこそ現場に足を運ぶ
私はマネージャーこそ現場に足を運ぶことが大切だと思っています。
最低ラインとして、次の2つを実践してください。
- 月1回以上の拠点訪問
- 少なくとも10〜15分の雑談を含む対話
※上記が難しいようであればzoomなどのMTGで回数をこなしてください。
訪問時に確認すべきポイントは3つ。
- 忙しさの実態
- 業務のボトルネック
- 現場が抱える不満
現場を見ないマネージャーは、そもそもスタートラインに立てません。
原則②|信頼がない施策は実装されない
現場がマネージャーに求める信頼の要素は次の3つです。
| 要素 | 現場が見るポイント |
|---|---|
| 一貫性 | 言動がブレない |
| 公平性 | 特定の人だけ優遇しない |
| 理解 | 現場の苦労を知っている |
特に重要なのは理解。
現場を理解しているマネージャーは自然と支持されます。
原則③|背景・目的・数値をセットで説明
ダメな伝え方
「この施策をやってください」
良い伝え方の型
背景:この地域の処方件数は前年比▲15%
目的:3か月で+10%回復
根拠:他店舗では同施策で平均+12%改善
現場は納得すれば動きます。
命令では動きません。
施策を確実に通す3ステップ
STEP1|現状可視化(10分でできる)
最低限用意するグラフは次の3つです。
- 薬局別売上推移
- 処方件数推移
- 他店舗比較
スライドの結論例は次のように書きます。
「A薬局は3か月連続で件数減少。対策が必要。」
STEP2|目的をKPIで定義
NG表現
「売上を上げたい」
OK表現
「3か月で処方件数+10%、平均単価維持」
KPI設計例は次のとおりです。
- 週次:処方件数
- 月次:平均単価
- 四半期:売上合計
STEP3|現場と共同で運用設計
やってはいけないことは、本部が一方的に決めること。
やるべきことは、次の一言です。
「この施策、現場で回りますか?」
現場の意見を反映し、修正を受け入れる姿勢が信頼を生みます。
最強の武器=1on1(1対1)の設計
1on1の基本ルール
推奨頻度は次のとおりです。
- 月1回
- 10〜15分
1on1アジェンダ(そのまま使える)
- 最近どう?(5分)
- 施策の感想(5分)
- 今月の改善1点(5分)
- (施策がない場合)今後のキャリアややりたいことは?
マネージャーの使える一言フレーズ
- 「あなたの負担が増えていないか知りたい」
- 「できない理由も教えてほしい」
- 「成果は一緒につくろう」
「とりあえず」を防ぐ施策チェックリスト
施策を出す前に、必ず次の5項目を確認してください。
- 背景を数値で示したか
- 目的をKPIで定義したか
- 現場の意見を聞いたか
- オペレーションが回るか検証したか
- 失敗時の代替案を用意したか
1つでも欠けたら施策は出さない。
これが鉄則です。
現場を動かすマネジメントの4原則(まとめ)
今日からできる4つの行動は次のとおりです。
- 現場訪問
- 信頼づくり
- 数値可視化
- 1on1実施
この4つが揃えば、施策は自然に回り始めます。
