鼻がつまって呼吸がしづらいと、睡眠の質が下がり、仕事や家事の集中力も低下します。特に夜間の鼻づまりは、いびきや無呼吸症状を悪化させることもあります。
鼻づまりは一見「風邪の一症状」のように思われがちですが、原因は非常に多岐にわたり、治し方も異なります。
この記事では薬剤師の立場から鼻づまりの原因・想定される疾患・OTC市販薬の成分別解説・おすすめ商品・病院受診の目安・治療方法・費用比較・Q&A形式の疑問解決まで徹底解説します。
鼻づまりの主な原因と想定される疾患
鼻づまりの背景には以下のような原因があります。
① 感染性(風邪やウイルス)
- 急性鼻炎(かぜ症候群)
- インフルエンザ、RSウイルスなど
鼻粘膜が炎症を起こし、血管が拡張・腫れることで通気が悪くなります。
② アレルギー性
- アレルギー性鼻炎(花粉症・ハウスダスト)
- 通年性アレルギー(ダニ・ペットなど)
アレルギー反応でヒスタミンなどの化学物質が分泌され、鼻水・くしゃみ・鼻づまりを引き起こします。
③ 慢性炎症性
- 慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
- 鼻茸(ポリープ)
鼻腔や副鼻腔の長期的な炎症によって通気障害が持続します。
④ 構造的異常
- 鼻中隔湾曲症
- 鼻腔狭窄
骨や軟骨の形によって鼻づまりが常時起きやすいタイプです。
鼻づまりに使われる主な成分と特徴
市販薬で鼻づまり改善を目的として含まれる成分は大きく4種類に分かれます。
① 抗ヒスタミン成分
例:クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェン
- アレルギー反応を抑えて、鼻水・鼻づまり・くしゃみを軽減
- 花粉症やアレルギー性鼻炎に有効
- 副作用として眠気が出やすい
第1世代抗ヒスタミン薬(例:ジフェンヒドラミンなど)
即効性が非常に高く、効果は強いですが、眠気や口の渇きなどの副作用も非常に強く出る傾向があります。日中の服用には不向きとされます。
第2世代抗ヒスタミン薬(例:フェキソフェナジン、セチリジン、ロラタジン、オロパタジンなど)
効果は穏やかで継続的な効き目が期待でき、眠気や抗コリン作用などの副作用が出にくいことが大きな特徴です。

② 血管収縮成分(鼻スプレー)
例:ナファゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩
- 鼻粘膜の血管を収縮させ、腫れを素早く改善
- 即効性があるが、長期連用すると「薬剤性鼻炎」のリスクあり効果が薄れていく可能性あり(3日以内が目安)
③ 抗ロイコトリエン成分(処方薬中心)
例:モンテルカストナトリウム
- アレルギー反応で分泌されるロイコトリエンを抑える
- OTCでは入手不可(病院処方)
- 即効性はなくしばらく継続使用が必要(小児科でよく使われる)
④ 去痰・抗炎症成分
例:カルボシステイン、ブロムヘキシン
- 粘膜の炎症を和らげ、鼻の通りを改善
- 慢性副鼻腔炎に有効
鼻づまり対策におすすめの市販薬(OTC)
以下は薬剤師目線で、原因別におすすめできる市販薬をピックアップしました。
【アレルギー性鼻炎タイプに】
アレルギーということで抗ヒスタミンがメイン。眠気と効果がマイルドなほうから順に記載しております。
アレグラFX(フェキソフェナジン塩酸塩)
特徴:第二世代で眠気がほぼない。安全性が高く日中も使用しやすい。その一方で効果も他に比べると控え目とうい印象。
服用方法:1日2回服用。
クラリチンEX(ロラタジン)
特徴:第二世代。眠気がほぼない。
服用方法:1日1回服用。
アレジオン20(エピナスチン塩酸塩)
特徴:バランス型。アレグラやクラリチンに比べ眠気が出る可能性あり。
服用方法:1日1回服用。
ストナリニZジェル、コンタック®鼻炎Z(セチリジン)
特徴:比較的効果は強い部類だが、その分眠気も。
服用方法:1日1回服用。
【即効性(鼻スプレー)求める方に】
長期使用はせずにここぞという時に。
ナザールスプレー(ナファゾリン塩酸塩)
特徴:抗ヒスタミンであるクロルフェニラミンマレイン酸塩も配合。
服用方法:1日6回を限度として鼻腔内に噴霧。適用間隔は3時間以上あける。
アルガード ST鼻炎スプレー(ナファゾリン塩酸塩)
特徴:クロルフェニラミンマレイン酸塩に加えアレルギーの原因であるヒスタミンの放出抑制するクロモグリク酸ナトリウムも配合。
服用方法:1日3~5回鼻腔内に噴霧。適用間隔は3時間以上あける。
【慢性副鼻腔炎タイプに】
チクナイン錠(辛夷清肺湯)
特徴:鼻の奥の菌を減らしながら炎症を鎮め、膿(うみ)を排出して、ちくのう症(蓄膿症)・副鼻腔炎を改善。漢方のため眠くなる成分はなし。
服用方法:1日2回の服用。
葛根湯加川芎辛夷
特徴:体を温める「葛根湯」をベースにした処方で、「川芎」と「辛夷」を配合し鼻づまりなどの症状を改善。漢方のため眠くなる成分はなし。
服用方法:1日2回の服用。
病院にかかる目安
- 鼻づまりが2週間以上続く
- 発熱・強い頭痛・顔面の痛みを伴う
- 膿のような黄色〜緑色の鼻水が出る
- 片側だけ長期間詰まっている
- 鼻血が頻繁に出る
病院とOTCではどちらが安く済むか?
項目 | 病院 | OTC |
---|---|---|
初診料+薬代 | 約3,000〜5,000円(3割負担) | 1,000〜3,000円程度 |
即効性 | 高い | 製品による |
長期治療の可否 | 可能 | 薬剤性鼻炎など注意 |
検査の有無 | あり(原因特定可) | なし |
短期的にはOTCの方が安いですが、原因不明のまま使い続けると長期的にコストが増える場合もあります。
また、OTCで抗生剤の販売はないため副鼻腔炎など抗生剤が必要な疾患に関しては病院にかかることをお勧めします。
病院で処方される薬、治療の例
急性鼻炎 → 抗ヒスタミン薬・去痰薬・鼻スプレー
副鼻腔炎 → 抗菌薬+去痰薬
アレルギー性鼻炎 → 抗ヒスタミン薬・ステロイド点鼻薬
構造的異常 → 手術治療(鼻中隔矯正術など)
Q&Aコーナー
Q1. 鼻づまり薬は毎日使ってもいい?
A. 血管収縮成分入りのスプレーは3日以内が目安。長期使用で薬剤性鼻炎になる恐れがあります。
Q2. 子供でも使える鼻づまり薬は?
A. 年齢制限のある成分が多く、小児用を選ぶ必要があります。必ずパッケージを確認しましょう。
Q3. 鼻づまりが片側だけの場合は?
A. 構造異常や腫瘍の可能性もあるため、早めに耳鼻科受診が必要です。
Q4. 赤ちゃんでも市販薬は使える?
A. 乳児・幼児は使える薬が限られていますし長引く可能性がありますので小児科・耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
まとめ
鼻づまりは、単なる風邪症状からアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など原因はさまざまです。
市販薬を使う前に、自分の症状がどの原因に近いかを把握し、成分別に選ぶことが大切です。
短期的な不快感ならOTCで十分対応できますが、
- 長引く鼻づまり
- 顔の痛みや発熱
- 匂いがしない
といった場合は迷わず病院を受診しましょう。
賢くセルフケアと医療機関を使い分けることで、時間とお金の無駄を減らし、早く快適な呼吸を取り戻せます。