花粉症といえば「春のスギ花粉」を思い浮かべる方が多いですが、実は秋にも花粉症は存在します。ブタクサ・ヨモギ・カナムグラなどのキク科の雑草や、イネ科植物の花粉が原因となり、鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・喉のイガイガなど、春と同じような症状を引き起こします。
さらに秋は朝晩の寒暖差や乾燥も重なり、風邪やアレルギーの見分けがつきにくい季節。適切なセルフケアとOTC(市販薬)を活用することで、病院に行かずとも快適に過ごせるケースも少なくありません。
秋の花粉症にかかる人の割合
近年、秋の花粉症患者は増加しています。調査では、
- 日本人全体の花粉症有病率:約40%
- そのうち秋の花粉症に悩む人:約10〜15%
- 都市部や河川敷付近で生活する人に多い
とされています。
「春のスギ花粉に比べると軽視されがち」ですが、実際には 約7人に1人が秋の花粉症を経験 している計算になります。
秋の花粉症と風邪の見分け方
秋は気温差が激しく風邪も流行る時期なので、症状の判別が難しいです。以下の表で整理しました。
症状 | 秋の花粉症 | 風邪 |
---|---|---|
発熱 | ほとんどなし | 37〜38℃程度の発熱あり |
鼻水 | 無色透明でサラサラ | 黄色や粘り気がある |
くしゃみ | 連発することが多い | 数回程度 |
目のかゆみ | あり | ほぼなし |
持続期間 | 数週間〜数か月続く | 3〜7日で回復 |
のど | かゆみ感が多い | 痛みが強い |
最大のポイントは「発熱の有無」と「症状の持続期間」。
風邪は短期で治る一方、花粉症は長期間続くため、症状が2週間以上続く場合は花粉症を疑いましょう。
生活の中でできる秋の花粉症対策
市販薬や病院での治療も有効ですが、生活習慣の中で花粉を避ける工夫を取り入れるだけでも症状を和らげることが可能です。
- 外出時のマスク・眼鏡
→ 花粉の侵入を物理的に防ぐ - 帰宅後のうがい・洗顔・着替え
→ 体や髪に付着した花粉を室内に持ち込まない - 洗濯物は室内干し
→ 花粉の多い日は外干しを避ける - 空気清浄機の活用
→ 特に寝室に置くと快適な睡眠が得やすい - 規則正しい生活と栄養バランス
→ 睡眠不足やストレスは免疫バランスを乱し、症状を悪化させる
こうしたセルフケアは、薬の効果を補強し、花粉シーズンをより楽に過ごす鍵になります。
市販薬(OTC)で使われる主な成分
秋の花粉症のOTC薬には以下の剤形が用いられています。
飲み薬(抗ヒスタミン薬:アレルギー症状を抑える)
- アレルギー反応を抑えて、鼻水・鼻づまり・くしゃみを軽減
- 花粉症やアレルギー性鼻炎に有効
- 副作用として眠気が出やすい
第1世代抗ヒスタミン薬(例:ジフェンヒドラミンなど)
即効性が非常に高く、効果は強いですが、眠気や口の渇きなどの副作用も非常に強く出る傾向があります。日中の服用には不向きとされます。
第2世代抗ヒスタミン薬(例:フェキソフェナジン、セチリジン、ロラタジン、オロパタジンなど)
効果は穏やかで継続的な効き目が期待でき、眠気や抗コリン作用などの副作用が出にくいことが大きな特徴です。

鼻スプレー(血管収縮成分)
例:ナファゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩
- 鼻粘膜の血管を収縮させ、腫れを素早く改善
- 即効性があるが、長期連用すると「薬剤性鼻炎」のリスクあり効果が薄れていく可能性あり(3日以内が目安)
目薬(抗ヒスタミン、ケミカルメディエーター遊離抑制、非ステロイド性抗炎症成分)
抗ヒスタミンの例:ケトチフェンフマル酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩
ケミカルメディエーター遊離抑制の例:トラニラスト
- とも抗アレルギー薬と言われ、目のかゆみやアレルギーによる充血を抑える。
非ステロイド性抗炎症成分の例:プラノプロフェン、グリチルリチン酸ニカリウム
- 充血がひどく炎症が起きてる場合、その炎症を抑える。
【商品レビュー】秋の花粉症におすすめ市販薬一覧
飲み薬
※効き目がマイルドなほうから掲載してます。
アレグラFX
成分:フェキソフェナジン塩酸塩
特徴:第二世代で眠気がほぼない。安全性が高く日中も使用しやすい。その一方で効果も他に比べると控え目とうい印象。
服用方法:1日2回服用。
クラリチンEX
成分:ロラタジン
特徴:第二世代。眠気がほぼない。
服用方法:1日1回服用。
アレジオン20
成分:エピナスチン塩酸塩
特徴:バランス型。アレグラやクラリチンに比べ眠気が出る可能性あり。
服用方法:1日1回服用。
ストナリニZジェル、コンタック®鼻炎Z
成分:セチリジン塩酸塩
特徴:比較的効果は強い部類だが、その分眠気も。
服用方法:1日1回服用。
鼻スプレー
長期使用はせずにここぞという時に。
ナザールスプレー
成分:ナファゾリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベンザルコニウム塩化物
特徴:抗ヒスタミンであるクロルフェニラミンマレイン酸塩も配合。
服用方法:1日6回を限度として鼻腔内に噴霧。適用間隔は3時間以上あける。
アルガード ST鼻炎スプレー
成分:ナファゾリン塩酸塩、クロモグリク酸ナトリウム、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベンゼトニウム塩化物
特徴:クロルフェニラミンマレイン酸塩に加えアレルギーの原因であるヒスタミンの放出抑制するクロモグリク酸ナトリウムも配合。
服用方法:1日3~5回鼻腔内に噴霧。適用間隔は3時間以上あける。
目薬
ロートアルガードクリニカルショット
成分:トラニラスト、クロルフェニラミンマレイン酸塩、プラノプロフェン、タウリン
特徴:抗ヒスタミン、ケミカルメディエーター遊離抑制、非ステロイド性抗炎症成分が配合されている高機能眼科用薬
服用方法:成人(15才以上)及び7才以上の小児:1回1~2滴、1日4回(朝、昼、夕方、就寝前)点眼
コンタクト装着時:×
アイリスAGガード
成分:ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸ニカリウム、タウリン
特徴:抗ヒスタミン、非ステロイド性抗炎症成分が配合されており、かゆみ・炎症をバランスよく抑える。
服用方法:1回1~2滴 1日4回(朝、昼、夕方及び就寝前)点眼
コンタクト装着時:×
ロートアルガードコンタクトa
成分:クロルフェニラミンマレイン酸塩、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、ビタミンB6
特徴:抗ヒスタミンでかゆみを止め、うるおいを保つための角膜を保護する成分コンドロイチンも配合。
服用方法:1回1~2滴、1日5~6回点眼
コンタクト装着時:〇
アイリスAGコンタクト
成分:クロルフェニラミンマレイン酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸亜鉛水和物、タウリン、パンテノール
特徴:目のかゆみをおさえる抗ヒスタミン成分、炎症で傷ついた目の新陳代謝を促進する成分(タウリン・パンテノール)を配合し、さらに目の炎症をしずめるイプシロン-アミノカプロン酸・硫酸亜鉛水和物を配合。
服用方法:1日5~6回、1回1~3 滴を点眼
コンタクト装着時:〇
病院にかかる目安と治療内容
病院にかかる目安
- OTCで改善しない
- 夜眠れないほどの症状
- 喘息やアトピーを合併している
- 妊娠・授乳中で薬の選択が難しい
病院での治療
- 処方薬の抗ヒスタミン薬(デザレックス、ビラノアなどOTC未販売)
- ステロイド点鼻薬(フルチカゾン、モメタゾンなど)
- 抗ロイコトリエン薬(モンテルカスト:鼻づまりに強い)
- 重症例では免疫療法(舌下免疫療法)
費用比較:病院 vs OTC
- OTC薬:1,500〜3,000円/月程度
- 病院(保険適用):診察+処方薬で2,000〜4,000円程度
Q&Aコーナー
Q1. 秋の花粉症と風邪の違いは?
A. 花粉症は熱が出にくく、透明な鼻水・くしゃみが続くのが特徴。
Q2. OTC薬はいつから飲むべき?
A. 花粉の飛散が始まる前〜初期に飲み始めると効果的。
Q3. 妊娠中でも市販薬は使える?
A. フェキソフェナジン(アレグラ)やロラタジン(クラリチン)は比較的安全とされるが、必ず医師に相談を。
Q4. 長期間飲んでも大丈夫?
A. 抗ヒスタミン薬は安全性が高いが、半年以上続く場合は病院受診を推奨。
まとめ
秋の花粉症は、「風邪に似ているため気づきにくい」 という特徴があります。
しかし、発熱の有無や症状の持続期間をチェックすれば、風邪と見分けることができます。
- 秋の花粉症は全体の 10〜15%程度 が発症
- 生活習慣の工夫(マスク・洗顔・空気清浄機)で症状を軽減
- 風邪と異なり、症状が 数週間以上続くのが特徴
- 市販薬や保湿剤をうまく活用し、つらい季節を乗り越えることが可能
薬剤師としての視点から言えば、生活習慣+市販薬の組み合わせ がセルフケアの基本。症状が強い場合や長引く場合は、耳鼻科やアレルギー科での受診をおすすめします。